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第2回学生向けスマートシティワークショップ開催レポート ~「”鉄道を超えた” 電鉄企業の活動を探る」を開催しました!~

第2回学生向けスマートシティワークショップ開催レポート ~「”鉄道を超えた” 電鉄企業の活動を探る」を開催しました!~

横浜市内の大学生を対象とした学生向けワークショップ「これからの『スマートシティ横浜』とは!?」。第2回目のワークショップが11月19日(水)、神奈川大学みなとみらいキャンパスオープンイノベーションスペースで開催されました。

今回のテーマは「”鉄道を超えた” 電鉄企業の活動を探る」。株式会社相鉄アーバンクリエイツの林様、東急株式会社の堀口様をゲストスピーカーにお迎えし、有限会社ビズテックの佐藤様のファシリテーションのもと、充実した議論が交わされました。

スマートシティとは何か——技術の先にある「人の幸せ」

ワークショップの冒頭、横浜未来機構の佐藤氏から改めて本プログラムの趣旨が語られました。

「スマートシティと聞くと、ICTやAI、モビリティといった技術面が注目されがちです。しかし、それらは手段に過ぎません。本当に大切なのは、人々が幸せに、心地よく、安全安心に暮らせる環境をどう作るかです」

世界のスマートシティは人間の生活に焦点を当てているケースが多い一方、日本は技術からアプローチする傾向が強いと言います。だからこそ、このワークショップでは「人の生活」を起点に、それを実現する「企業の力」に注目します。

日本第二の都市・横浜には、グローバルに活躍する企業が数多く集積しています。今回は、地元の相鉄グループと広域に沿線を持つ東急グループという対照的な二つの鉄道会社から、単なる輸送業者を超えた街づくりへの関わり方を学ぶ貴重な機会となりました。

プログラム企画を担当する佐藤氏からの趣旨説明

相鉄アーバンクリエイツ「横浜駅西口大改造構想」——Well-Crossingというまちづくり
横浜駅西口大改造構想——” Well-Crossing”というコンセプトでのまちづくり推進

最初に登壇したのは、株式会社相鉄アーバンクリエイツ横浜駅事業部の林様。林氏は昨年開業した「THE YOKOHAMA FRONT」の事業推進や、相鉄グループが掲げる「横浜駅西口大改造構想」の推進に携わっています。

林氏がまず紹介したのは、2025年4月に発表された「都市型地産地消植物工場の実証実験」プロジェクト。スタートアップと協業し、相鉄沿線の未活用施設を有効活用して葉物野菜を栽培、相鉄線を活用した「貨客混載」により輸送し、沿線にあるグループ会社が運営するスーパーで販売するという、取り組みです。

そして本題として語ったのが、2024年9月に発表された「横浜駅西口大改造構想」です。

横浜駅は6社の鉄道事業者が乗り入れる日本一のターミナル駅。その西口エリアは多様な人々が行き交う「繁華性」が魅力です。しかし林氏は「従来の街づくりは経済合理性を最優先して進められてきました。しかし現在は、ウェルビーイング(豊かさや幸福)、サステナビリティ等といった、経済合理性だけにとらわれない新たな価値観が、より一層重視される時代になってきています。」と語ります。

そこで相鉄グループが掲げたのが、” Well-Crossing “というコンセプト。横浜駅西口の「ターミナル性」、「繁華性」という魅力に、新たにWell-beingという要素を加えた街づくりを推進していきます。

「多様なWell-being=豊かさの創造と追求」——商業だけでなく、働く、暮らす、遊ぶ、学ぶといった多様な用途が交わり、日常的にウェルビーイングに出会える街へ。多様な人々や企業、情報が集まり交流することで新しい「Well-being」への出会いを生む、Well-Crossingという行動を提案する街へ——それが” Well-Crossing”による提供価値です。

3つの重点テーマと公共空間の再編

この将来像実現のため、相鉄グループは3つの重点テーマを設定しています。

1.Well-Crossingを象徴するコンテンツ・サービスの導入
2.共創型まちづくりを通じた新産業の集積
3.多様な人々をつなぐ仕組みの整備

具体的には、相鉄ムービルの建て替えを皮切りに、2040年代を目標に段階的な再開発を推進していきます。

林氏が特に力を入れて説明したのが、公共空間の再編です。現在の横浜駅西口はバスやタクシー乗り場が集中し歩行者空間が狭い状態。これを改善するため、バス・タクシーを分散配置し、駅前に広場を創出。そこでイベントやアクティビティが展開できる「ウォーカブル(歩きたくなる)な街」を目指していきたいとの考えです。

実際、2025年5月には駅前広場で実証実験を実施。学生たちには動画も披露され、広場でイベントが開催され多くの人々が集い交流する様子が紹介されました。また、横浜駅周辺の河川を活かした水辺空間の活用も構想の重要な要素です。

Vlag yokohama——事業共創の拠点

さらに林氏が紹介したのが、THE YOKOHAMA FRONT最上階にある「Vlag yokohama(フラグヨコハマ)」です。

これは相鉄アーバンクリエイツと東急が共同運営する事業共創施設。企業、自治体、クリエイター、住民、学生など多様なプレイヤーが集まり、課題解決や新しい価値創出にオープンイノベーションで取り組む場です。会員制ですが、学生向けには低価格の会員枠も用意され、一般向けのオープンイベントも定期的に開催されています。

(株)相鉄アーバンクリエイツの林氏による「横浜駅西口大改造計画」をテーマにした取組説明

東急株式会社「郊外部のまちづくり」——チャレンジパーク早野という実験 
チャレンジパーク早野——”企業公園”という新しい試み

続いて登壇したのは、東急株式会社の堀口様。堀口氏は前職で市民農園開発に従事し、2024年1月に東急に入社。現在は多摩田園都市エリアの郊外まちづくりや団地再生に関わっています。

堀口氏が詳しく紹介したのが、「nexusチャレンジパーク早野」です。

川崎市と横浜市の市境近辺に位置する約8000平米の遊休地。建物を建てられない制約があるため、トレーラーハウスを設置し、東急社員が常駐する「企業公園」として2022年4月に開業しました。

ここは「制約を最小限に、誰もが自由に使える」がコンセプト。月1〜2回のペースで行われるイベントでは、多世代交流や地域のコミュニティ形成を図り、マルシェ、ワークショップ、地域交流、実証実験など、地域住民やバディである行政、学校、企業などとともに多様な活動が展開されています。 開業から2年で累計来場者数は2万人を超え、延べ150組以上のイベント出店、50を超えるバディとの実証実験を実施。生活者起点での魅力的な街の仕掛けづくりに向けて、多くの地域人材を発掘してきました。

団地の課題とnexus構想

チャレンジパーク早野が位置する虹ヶ丘・すすき野団地エリアは、高齢化、児童数減少、外国人家族の孤立化など、郊外団地が抱える典型的な課題に直面しています。そこで東急は、地域住民やバディと手を取り、地域・多世代交流を促す手段として、例えば放課後等デイサービスと近隣大学生が連携した駄菓子屋や、地域児童が高齢者向けに企画した青空図書館など、地域課題に対応する取り組みを支援・展開しています。

堀口氏が語ったのは、チャレンジパーク早野を起点とする「nexus(ネクサス)構想」。地域の資源、人、不動産、サービス、交通、公共空間をネットワーク化し、サステナブルな都市モデルを目指すもの。キーワードは「生活者起点」「自律分散型まちづくり」「関係人口の創出」です。

今後は屋内拠点の整備、シェアキッチン、空き家活用、学生参加多世代交流など、さらなる展開を検討中です。

東急(株)の堀口氏による「郊外部のまちづくり」の取組説明

学生たちとの活発な議論

ワークショップ後半では、学生たちから多くの質問や提案が飛び出しました。

「Vlag YOKOHAMAは誰向けの施設なのか?」という質問に、林氏は「横浜駅は生活密着の課題が集まりやすく、多様なプレイヤーが実証・社会実装しやすい場所。学生向けには安価なプランも用意している」と回答。

「多様性を重視すると”ごちゃごちゃ”して不整合にならないか?」という指摘には、「異なる価値観がぶつかることで新しい価値が生まれる。エリアマネジメントやネットワークづくりで、『みんなで街をよくしよう』という方向性を合わせることが重要」と答えました。

「団地の将来は? “縮める”選択肢もあるのでは?」という提案に、堀口氏は「例えば “自然”や ”スポーツ”など、エリアごとの特色を活かしたまちづくりの方向性はあり得る。行政・地域との協働が必要」と、柔軟な視点を示しました。

他にも、「横浜駅西口に学生が集合できるモニュメントがほしい」「郊外バスを地域交流の拠点として活用できないか」といった具体的な提案が学生たちから出され、両社とも真摯に受け止め、議論を深めました。

参加学生と企業による活発な意見交換

ワークショップを終えて

今回のワークショップでは、鉄道会社が単なる輸送業者ではなく、街づくりの総合プロデューサーとして多彩な役割を果たしていることが浮き彫りになりました。

相鉄は横浜駅西口という都心ターミナルで、ウェルビーイングと多様性を軸にした新しい街の価値を創造。東急は郊外団地という課題の多いエリアで、住民とともに暮らしを再編集し、新しいコミュニティを育んでいます。

どちらにも共通するのは、ICTやデジタル技術を「手段」として活用しつつ、あくまで「人間中心」「多様性の尊重」「地域との協働」を大切にしているという点です。そして、行政や企業、住民、学生など多様なプレイヤーを巻き込み、長期的な視点で実証実験を重ねながら新しい価値を創造していく——そのプロセスそのものが、これからのスマートシティのあり方を示唆しています。

参加した学生たちは、異なる学部・専門分野から集まり熱心に議論を交わし、鉄道会社という身近な存在が持つ「街づくりの力」を新しい視点で捉え直す機会となったようです。

本ワークショップは全6回にわたって開催されます。次回は11月25日(火)〜26日(水)に開催される「アジア・スマートシティ会議2025」の聴講です。

また、12月3日(水)は日揮株式会社にお伺いして、「スマートシティの作り手を考える」をテーマにワークショップを開催します。

今後もワークショップの様子をレポートしていきますので、ぜひご注目ください!

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