※第3回は2025年11月25日-26日開催の「アジア・スマートシティ会議」自主聴講であったため、今回は第4回目となります。
横浜市内の大学生を対象とした学生向けワークショップ「これからの『スマートシティ横浜』とは!?」。第4回目のワークショップが12月3日(水)、日揮株式会社(以下、日揮)本社の技術展示室で開催されました。 今回のテーマは「スマートシティの作り手を考える」。日揮 未来戦略室にご協力いただき、有限会社ビズテックの佐藤氏のファシリテーションのもと、充実した議論が交わされました。
スマートシティの本質——技術ではなく、人の幸せを起点に

ワークショップの冒頭、ファシリテーターの佐藤氏から改めて本プログラムの趣旨が語られました。
「スマートシティというと、ICTやモビリティといった技術の話が中心になりがちです。しかし、技術を使うことを目的にするのは違います。私たちが今後よりよく、より幸せに、より安全に生きられるような環境——それを横浜市がどう作っていくかを考えるのが、このワークショップの目的です」 第1回は横浜銀行から地域金融の視点、第2回は東急電鉄と相鉄から鉄道会社の視点でスマートシティを考えました。そして今回は、「日揮」という会社にフォーカスします。
日揮とは何をする会社か——プラントエンジニアリングを通じて社会インフラを支える企業
日揮グループは幅広い事業領域を対象とする総合エンジニアリング事業、オンリーワン技術が支える機能材製造事業、2つの事業セグメントを中心に世界のあらゆる地域でビジネスを展開されています。その中で、総合エンジニアリング事業の特徴は、プラントの設計・調達・建設まで一貫して提供する「EPC(Engineering, Procurement, Construction)」というビジネスモデルです。また、日揮株式会社は日揮グループの国内における総合エンジニアリング事業を担っています。
5つの事業領域と「Enhancing Planetary Health」

日揮グループは現在、5つの領域に注力していることが説明されました。
1.エネルギートランジション(石炭→石油→ガス→再生可能エネルギーへの移行)
2.ライフサイエンス、ヘルスケア(医薬品製造、病院建設など)
3.資源循環(プラスチックリサイクル、化学プラント)
4.高機能材(触媒などセラミック製品)
5.産業・都市インフラ(半導体、データセンター、蓄電池など)
これらの領域設定の背景にあるのが、日揮グループの存在意義(Purpose)である「Enhancing Planetary Health」——こちらには「“人と地球”の健康は密接に関係しており、この2つを追求していくことで、豊かな未来を創っていく」というメッセージが込められているとのことでした。
未来戦略室の新規事業——フードテックとエネルギー
日揮の未来戦略室では、将来の社会課題解決を見据えた新規事業を展開していると説明いただきました。
「フードテック分野では、陸上養殖事業として、福島県浪江町に工場を建設し、現在はサバを養殖。特徴は閉鎖循環式で水を循環させ、土地とエネルギーがあれば場所を選ばず展開できる技術です。また、エンジニアリング事業で培った細胞培養技術の知見を活かし、培養肉の研究開発も進めています。
エネルギー分野では、ペロブスカイト太陽電池を含む薄膜太陽電池による「どこでも発電」事業などに取り組んでいます。
ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型太陽電池と比べて軽量で柔軟性があり、耐荷重の制約で設置できなかった場所にも適応できるという画期的な技術。日揮みらいファンドを通じてスタートアップに投資し、社会実装という観点で共創を目指しています。」
また、「ペロブスカイトはまだ黎明期。これから大量生産に入るフェーズで、それがクリアになれば従来の太陽電池と比べて大幅なコスト削減が期待されます」と、今後の可能性についてコメントがありました。
これらの新規事業は、いずれも未来戦略室で検討され、子会社を設立した事業化など様々なスキームで進められているそうです。
<参考>
陸上養殖事業 :かもめミライ水産株式会社
培養肉事業 :株式会社オルガノイドファーム
どこでも発電事業 :どこでも発電所 | ペロブスカイト太陽電池の新施工法
ワークショップ——2040年の横浜スマートシティを描く
講義の後、学生たちはワークショップに取り組みました。テーマは「2040年の横浜スマートシティはどのような問題が解決されているか」「未来の横浜スマートシティを一言で表現すると?」
学生たちが描いた未来像

学生からは、以下のようなビジョンが提示されました。
「ワークライフバランスが取れている街」——すべてがAIに置き換わるのではなく、人と技術が調和している状態
「環境への負荷が少ない街」——再生可能エネルギーや資源循環が当たり前になっている
「交通インフラが最適化された街」——需給バランスが最適化され、無駄な移動や待ち時間がない
2030年ごろ、そして1〜2年後の具体策
2040年のビジョンを描いた後、それを実現するための具体的なアクションも議論しました。
2030年ごろのデザイン
・深夜帯は周辺交通の兼ね合いから自動運転の実証実験をやりやすいのでは
・山下ふ頭でのイベント開催時にAIを活用して自動運転の利用につなげる
・横浜駅やみなとみらい21地区などの集客が多い場所での踏力発電の実証実験
1〜2年後のデザイン
・GREEN×EXPO 2027の会場間輸送を自動運転で担う——今後の自動運転普及の切り口になるのではないか
・波力や人の踏力を活用した発電の実証実験
ワークショップを終えて
今回のワークショップでは、スマートシティの「作り手」として、プラントエンジニアリングの視点から議論が行われました。
日揮が持つプロジェクトマネジメント力——大規模で複雑なプロジェクトを、多様なステークホルダーと協働しながら、計画通りに品質を担保して完成させる力——は、スマートシティという複雑な街づくりにも応用できる強みです。
また、陸上養殖、培養肉、ペロブスカイト太陽電池といった社会課題解決につながる新たな技術に、企業が先行投資し、実証を重ねながら社会実装を目指している姿は、学生たちに大きな刺激を与えたようです。
参加した学生たちからは「日揮という会社を初めて知ったが、社会インフラを支える重要な存在だと理解できた」「技術だけでなく、プロジェクト全体を動かす力が必要だと分かった」「横浜でも再生可能エネルギーや資源循環の実証実験ができるのでは」といった感想が聞かれました。
本ワークショップは全6回にわたって開催されます。次回は12月10日(水)に「国際的な物の動きと生活の質向上」をテーマに、株式会社日新の方々をお迎えします。
今後もワークショップの様子をレポートしていきますので、ぜひご注目ください!
