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第5回学生向けスマートシティワークショップ開催レポート~「国際物流から見た横浜スマートシティの未来」を開催しました!~

第5回学生向けスマートシティワークショップ開催レポート~「国際物流から見た横浜スマートシティの未来」を開催しました!~

横浜市内の大学生を対象とした学生向けワークショップ「これからの『スマートシティ横浜』とは!?」。第5回目のワークショップが12月10日(火)、一般社団法人横浜みなとみらい21ゲストルームで開催されました。

今回のテーマは「スマートシティ実現のための、国際物流の課題と未来構想」。株式会社日新DX推進部Forward ONE推進課の伊藤光平様をゲストスピーカーにお迎えし、有限会社ビズテックの佐藤様のファシリテーションのもと、充実した議論が交わされました。

スマートシティの「血液」——都市を支える国際物流

ワークショップの冒頭、ファシリテーターの佐藤氏から改めて本プログラムの趣旨が語られました。

「スマートシティというと、ICTやモビリティといった技術の話が中心になりがちです。しかし、技術を使うことを目的にするのは違います。私たちが今後よりよく、より幸せに、より安全に生きられるような環境——それを横浜市がどう作っていくかを考えるのが、このワークショップの目的です」

第1回は横浜銀行から地域金融の視点、第2回は東急電鉄と相鉄から鉄道会社の視点、第4回は日揮からプラントエンジニアリングの視点でスマートシティを考えてきました。そして今回は、都市の「血液」とも言える国際物流に焦点を当てます。

ファシリテーターを担当する(有)ビズテックの佐藤氏

日新とは——横浜を玄関口とする国際物流のプロフェッショナル

ワークショップは、株式会社日新DX推進部の社員の皆様による自己紹介からスタートしました。

まず、DX推進部Forward ONEの土屋様。入社9年目、もともと冷凍倉庫の現場出身で、現在はDX推進を担当されています。
続いて、同じくDX推進部物流デザイン課の畢様。入社1年目の新入社員として、「皆さんと目線が近い」と親しみやすい自己紹介をされました。
そして、DX推進部ハコラボ・Liberth事業推進課の関根様。リチウムイオン電池の循環物流ソリューションという新規事業を担当されています。航空貨物の輸出入営業を10年間経験された後、今年4月から新規事業に携わっているとのことです。
最後に、本日のゲストスピーカーである伊藤光平様が登壇。伊藤氏は、「私たちは『日に新しい』と書いて『日新』。国際物流業者として、世界の人々に感動を運び、地球を笑顔で満たすというパーパスを持って事業を展開しています」と切り出しました。

今回ご協力いただいた(株)日新DX推進部の皆様(左上から時計回りに伊藤様、畢様、土屋様、関根様)

横浜港——国際物流の玄関口

伊藤氏はまず、物流業界と横浜の現在について、具体的なデータを交えて説明しました。

「皆さんは『物流』と聞いて何を思い浮かべますか?」

この問いかけに、学生からは「宅配便」「長時間の労働」「災害時の物資輸送」といった言葉が挙がりました。

「そうですね。皆さんが普段目にするのは、主に国内の宅配便です。しかし、国際物流は少し違います。私たちは主に企業と企業の間でのモノの輸出入、いわゆるB2Bの物流をメインに扱っています」
伊藤氏が示したデータによれば、日本国内の物流業者は約7万社、業界の営業収入は約29兆円、全就業人口の約3%が物流業界で働いています。「これは、社会と経済を支える巨大な基幹産業です」と伊藤氏。
特に横浜港は、日本の国際物流において極めて重要な拠点です。2023年のコンテナ取扱量は、東京港に次いで国内2位の約307万TEU(20フィートコンテナ換算)。外航船の入港数では国内1位を誇ります。

「横浜港がなくなったり、機能が停止してしまったりすると、日本経済に大きな影響が出ます。それだけ重要な玄関口が、皆さんが今生活されているこの横浜にあるのです」

国際物流の基礎知識——複雑な輸送の流れを理解する

続いて、伊藤氏は国際物流の基礎知識について詳しく解説しました。
国際輸送には、主に「海上輸送」「航空輸送」「トラック輸送」「鉄道輸送」の4つの手段があります。

海上輸送では、FCL(Full Container Load:コンテナ1本を丸ごと使う)とLCL(Less than Container Load:複数の荷主の貨物を1本のコンテナに混載する)という2つの方式があります。「例えば、土屋さんの会社、畢さんの会社、関根さんの会社の貨物を一つのコンテナにまとめて運ぶのがLCLです」と、具体的な例を挙げて説明されました。

航空輸送では、旅客便の貨物スペースを利用する方法と、貨物専用便を使う方法があります。「皆さんが飛行機に乗ったとき、足元の下にあるスペースに、実は商業貨物も一緒に載っていますよ」という説明に、学生たちは驚いた様子でした。

そして、国際輸送に欠かせないのが「通関」という手続きです。「国と国の間でモノを動かすには、必ず輸出通関と輸入通関が必要です。税金を払ったり、法規制をクリアしたり——これがないと、貨物は国境を越えられません」

日新の役割について、伊藤氏は「CARRIER」と「FORWARDER」の違いを説明しました。
CARRIERは船や飛行機、トラックを所有して実際にモノを運ぶ事業者。一方、私たちFORWARDERは『物流の設計士』です。様々な輸送手段、倉庫、通関手続きを最適に組み合わせて、お客様にとって最適なルートを設計し、手配する——それが私たちの仕事です」

(株)日新の伊藤氏による国際物流の説明

日新の特徴と取り組み——多様な貨物とグローバルネットワーク

日新は1938年創業、22カ国171拠点のグローバルネットワークを持つ総合物流企業です。取り扱う貨物も多岐にわたり、自動車から食品・ワイン、化学品、精密機器、さらには美術品まで、あらゆるモノに最適な物流を提供しています。

学生から「美術品はどうやって運ぶのですか?」という質問が出ると、関根氏からは具体的な事例を紹介しました。

「美術品は非常にデリケートです。専用の梱包材を使い、衝撃を検知するシールを貼って、温度や湿度も管理します。保険もしっかりかけて、航空便で運ぶことが多いですね。」

また、日新が現在力を入れているのが、DX化と環境への配慮です。

「物流業界は、デジタル化が遅れていると言われています。また、CO2排出量も多く、2050年カーボンニュートラル達成は至上命題です」 日新では、輸出入業務を効率化するDXサービスや、リチウムイオン電池の回収・リサイクルといった静脈物流、リターナブル容器を活用した「HACO Lab.」プロジェクトなど、次世代物流の実現に向けた取り組みを進めています。

スマートシティ実現へ——4つのコア課題

伊藤氏は、スマートシティ実現に向けて、国際物流が抱える4つのコア課題を提示しました。

1.サプライチェーン(効率性)
労働力不足、交通渋滞、コンテナの非効率な動き、小口多頻度化への対応——これらの課題に対し、AIによる需要予測、最適ルートの自動算出、港湾・倉庫・輸送事業者間のリアルタイムなデータ連携が求められています。

2.脱炭素(環境)
物流はCO2排出量の多い産業です。港湾設備の電化、グリーンエネルギー供給拠点の整備、サーキュラーエコノミーの推進が必要です。

3.レジリエンス(強靭化)
パンデミック、地政学的紛争、自然災害——一つの混乱がサプライチェーン全体を麻痺させる脆弱性があります。災害時にも機能を維持するBCP(事業継続計画)や、代替輸送ルートの確保が求められます。

4.自動化・効率化(雇用)
深刻な労働力不足と就業者の高齢化、身体的負担の大きい作業環境——これらに対し、定型業務の自動化を進めつつ、人はより付加価値の高い業務へシフトする必要があります。
「真のスマートシティとは、単なるデジタル技術の導入ではありません。人々がより効率的で、持続可能で、レジリエントな環境で生活し働くための仕組みです。その実現には、都市の血液とも言える『国際物流』の進化が不可欠です」

学生たちとの活発な質疑応答

参加学生との質疑応答

講義の後、学生たちから多くの質問が飛び出しました。

「物流業界は本当に重労働なのですか?」という率直な質問に、伊藤氏は「否定できない部分もあります。ドライバー不足、長時間労働——2024年問題と言われているのは、そういうことです。ただ、業界全体で改善に向けて取り組んでいます」と正直に答えました。

「個人でも日新に依頼できますか?」という質問には、「基本的には企業向けのサービスです」と回答。

「名古屋港の方がコンテナ取扱量について多いイメージがあったのですが」という質問には、「コンテナ数では横浜が2位ですが、貿易額で見ると名古屋港の方が高いかもしれません。トヨタをはじめとする自動車産業が集積しているので、完成車輸送など、コンテナ以外の輸送も多いです」と詳しく説明しました。

他にも、「輸送できない貨物は何ですか?」、「通関が最も厳しい国は?」、「商社と物流会社の関係は?」など、具体的な質問が次々と出され、伊藤氏をはじめとする日新の皆様が丁寧に答えていきました。

ワークショップ——未来の横浜物流を考える

参加学生同士による議論

ワークショップでは、学生たちが先ほど提示された4つのコア課題(サプライチェーン効率化、脱炭素、レジリエンス、自動化・雇用)について議論しました。

学生たちから出された主な提案は以下の通りです。

1.レジリエンス強化
「災害時に備えて、地域ブロックごとに『防災物流対策本部』のような仕組みを作れないでしょうか。平時の港湾予約システムを、有事の際に迅速に切り替えられる業界横断システムがあれば、災害時の物資輸送がスムーズになるはず」

2.サプライチェーン効率化
「港湾の渋滞や待機時間を減らすために、業界全体で統一された予約システムやプラットフォームが必要だと思います。ただ、それには行政と民間の両方が関わる司令塔機能が必要ではないでしょうか」

3.脱炭素
「横浜港でもっとグリーンエネルギーを活用できないでしょうか。例えば、港湾設備の電化や、電動トラックへの切り替えを進めるインフラ整備が必要です」

4.自動化
「自動化が進むと雇用が減るのでは、という懸念もありますが、むしろ人はより創造的な業務にシフトできるのではないでしょうか。クレーン操作などの定型業務を自動化し、人は計画・管理・改善といった付加価値の高い仕事に集中する——そんな未来の働き方を目指せると思います」

伊藤氏からは、「現場にいると、どうしても目の前の課題に追われがちです。今日、皆さんから出たアイデアは、私たちにとって新鮮な視点ばかりでした。特に、市民や学生の皆さんが物流の課題解決の担い手になれる、という発想は素晴らしいと思います」との感想がありました。

ワークショップを終えて

ワークショップ閉会前には学生と(株)日新の社員との間で自由に意見が交わされました

今回のワークショップでは、普段あまり意識することのない「国際物流」という巨大なインフラが、私たちの生活を支えていることが浮き彫りになりました。

スマートシティの実現には、ICTやモビリティだけでなく、都市の「血液」である物流の進化が不可欠です。そして、その物流を支えているのは、横浜港という日本有数の玄関口であり、日新のような物流企業の日々の努力です。

どの課題も一企業だけでは解決できず、業界横断、官民連携、そして市民や学生といった多様なプレイヤーの参加が必要だということが、議論を通じて明らかになりました。

参加した学生たちからは、「物流業界の奥深さに驚いた」「横浜港がこれほど重要だとは知らなかった」「スマートシティには、見えないところで働く人たちの努力が不可欠であると実感した」といった感想が聞かれました。

本ワークショップは全6回にわたって開催されます。次回は2026年1月7日(水)にNTT東日本の「NTT e-city labo」と「Wellness Lounge」を訪問します。

今後もワークショップの様子をレポートしていきますので、ぜひご注目ください!

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