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第6回経営層ミーテングを開催しました

第6回経営層ミーテングを開催しました

2025年12月1日(月)、第6回 横浜未来機構 経営層ミーティングを、一般社団法人横浜みなとみらい21プレゼンテーションルームにて開催しました。当日は会員企業の経営層を中心に多数が参加し、オープンイノベーションと社外連携の実践に向けた活発な対話が繰り広げられました。

「企業価値向上のための社外連携」を問う

一般社団法人日本オープンイノベーション研究会 成富一仁氏によるキーノートスピーチ

今回のミーティングでは、一般社団法人日本オープンイノベーション研究会 代表理事 成富一仁氏をゲスト講師としてお招きし、「企業価値向上のための社外連携の今 ~共創時代における連携戦略を考察する~」をテーマに講演いただきました。

冒頭、横浜未来機構事務局長の古木は、「大企業会員の皆様の経営層レベルのネットワーク形成、そして経営層のリーダーシップによってイノベーションを進めていくことを目的に、この経営層ミーティングを開催しています」と本ミーティングの趣旨を説明。今回で6回目となる本ミーティングが、顔見知りとなり気軽に意見交換できる関係性を築く場であることを強調しました。

成富氏はメーカーの技術職、経営支援団体、DXコンサルティングファームを経て、2021年よりオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」を運営する株式会社eiiconに参画。これまで製造業の経営課題解決に資する情報提供や教育プログラム設計に携わり、アメリカ、中国、ドイツ、イスラエルなど海外の先進事例を継続的に調査してきた実績をお持ちです。そうした豊富な経験を踏まえ、一般社団法人日本オープンイノベーション研究会を設立し、現在代表理事を務めています。

ご登壇くださった「一般社団法人日本オープンイノベーション研究会」の成富氏

オープンイノベーションの本質と日本企業の現在地

講演は、オープンイノベーションの定義と歴史から始まりました。成富氏は、「オープンイノベーションとは、2003年にヘンリー・チェスブロウが提唱した経営手法。意図的に社外の力や知見、技術を取り込み、あるいは自社のテクノロジーやアイデアを外に出していきながら、組み合わせによってイノベーションを加速させていく考え方です」と説明。

しかし、グローバル企業と比較すると、日本企業の実践度は依然として低い状況にあります。調査によると欧米企業では売上2億5000万ドル以上の企業の8割弱がオープンイノベーションに取り組んでいるのに対し、日本企業では約5割弱にとどまっています。成富氏は「もっともっと普及していいはず」と指摘しました。

「逆U字カーブ」現象―連携の最適値とは?

講演の中で特に注目されたのが、「逆U字カーブ現象」に関する知見です。成富氏は、外部知識の活用には最適な「幅」と「深さ」があり、連携先を広げすぎると逆に効率が下がることを示しました。

調査によれば、情報リソースの幅は8~11件程度、深いプロジェクトでは3件前後が望ましいとのこと。それ以上になると、調整コストの増大、プロセスの混乱、情報過多により、かえって成果や効率が阻害される「逆U字カーブ」が生じるのです。

「連携先を増やせば必ずしも成果が上がるわけではなく、最適なバランスを見極めることが重要」と成富氏は強調しました。

社内連携体制の構築が成否を分ける

さらに、オープンイノベーションが成果に繋がるためには、社内体制や調整メカニズムの整備が不可欠であることも指摘されました。

「成果を上げている企業ほど、社内の他部門との連携体制が構築されています。人事や財務(CFO)なども巻き込んだ全社的な連携体制がなければ、社外連携も空回りしてしまう」

社外との連携ばかりに目が向きがちですが、実は社内連携こそがオープンイノベーション成功の鍵を握っているという示唆は、参加者に大きな気づきをもたらしました。

成富氏によるキーノートスピーチ

新規事業の厳しい現実とスタートアップ連携の好機

新規事業開発についても、現実的な視点が示されました。「グロース市場上場企業の事業規模を見ていると、立ち上げ10年で売上30億円、経常利益3億円規模になる傾向がある」という内容を紹介し、大手企業が満足する規模に到達するには、既存事業との連携やM&Aの活用が必須であると語りました。

一方で、スタートアップ連携については「今が好機」と強調。大企業の6割以上がスタートアップ連携を実施しており、スタートアップへの投資は10年で約10倍に成長しファンドサイズも大きくなっている。海外でも資金調達の大規模化・業界集中が進んでいる。ただ日本では相対的に連携余地が大きい段階であり、連携の絶好のタイミングだとしました。

参加企業によるフリートーキング・ディスカッション

講演後は、質疑応答とフリートーキングセッションに移りました。

以下のような実務的で具体的なテーマについて、活発な議論が交わされました。

講演を振り返りながら多くの意見交換を行いました

● 社内連携と社外連携のバランスをどう取るか

「オープンイノベーションに注力すればするほど、社内との調整が難しくなる」という課題が共有されました。成富氏は「社内連携なくして社外連携なし。まず社内の体制を整えることが先決」と助言。特に人事部門や財務部門などのバックオフィスとの連携が重要であり、全社的な推進体制の構築が不可欠だと強調しました。

● 非連続成長への挑戦―M&Aかオーガニックか

「既存事業の延長線上では成長に限界がある。非連続な成長をどう実現するか」という問いに対し、成富氏は「オーガニック(自社単独)での非連続成長は極めて困難。M&Aやスタートアップ連携を戦略的に組み合わせることが現実解」と回答しました。

● 新規事業の成長停滞―10〜30億円の壁をどう評価するか

「新規事業が売上10〜30億円で停滞している場合、投資を続けるべきか撤退すべきか」という経営判断についても議論されました。成富氏は「グロース上場企業の成長率などの実態をみると、既存事業との相乗効果やM&Aによる成長加速を検討すべき。単独での成長だけを追い続けるのは非効率ではないか」と提言しました。

新規事業を積極的に推進する企業関係者からも多くの質問が飛び交いました

● スタートアップ人材の育成―「0→1」から「10→100」へ

「スタートアップや新規事業を”0→1″から”10→100″のフェーズへ成長させる際、どのような人材・スキルが必要か」という質問も上がりました。成富氏は「各フェーズで求められる専門性は異なる。初期は起業家精神や仮説検証力、成長期はマーケティングや組織づくりのスキルが必要。人材育成や外部からの登用も含めた戦略が重要」と答えました。

● 行政・自治体との連携の壁と可能性

官民連携についても議論が及びました。「自治体との連携には時間がかかり、意思決定のスピード感が合わない」という声に対し、成富氏は「自治体も変わりつつある。特に実証実験やオープンイノベーションに前向きな自治体も増えている。WIN-WINの関係を築くためのコミュニケーションが鍵」と語りました。

自治体からの出席者との意見交換も行われました

横浜市からの提案―みなとみらいの「(仮称)未来ビジョン」

ディスカッションの終盤では、横浜市都市整備局都心活性化推進部担当部長の木村氏から、横浜みなとみらい地区の「(仮称)未来ビジョン」について説明がありました。

木村氏は「みなとみらい地区は開発が99%完了し、今後は”価値を磨き上げる””世界中から人や企業を引きつけるまち”を新たなビジョンとして考えています」と述べ、以下のような取り組みを紹介しました。

木村氏による「(仮称)未来ビジョン」の説明

社会実証実験の推進: まち全体を実証フィールドとして活用
インフラ老朽化への対応: 先進的な維持管理技術の導入
災害対応力の強化: レジリエンスの高い都市づくり
環境先進都市への挑戦: 脱炭素・サステナビリティの実現

木村氏は参加企業に対し、「みなとみらいの将来を考える中で、一緒に新しい価値を創造していきたい」と連携を呼びかけました。

今後に向けて

本ミーティングは、オープンイノベーションを単なる掛け声ではなく、「社内外連携の最適バランス」「現実的な成長戦略」「エコシステム全体での価値創造」として実践していくためのヒントと勇気を参加者に提供する機会となりました。

参加者からは「逆U字カーブの概念は目から鱗だった」「社内連携の重要性を改めて認識した」「スタートアップ連携の好機という指摘が参考になった」といった前向きな声が多く聞かれました。

横浜未来機構では、今後も経営層同士のネットワーク構築と実践知の共有を通じ、企業変革を後押しする場を継続的に提供してまいります。

次回の第7回経営層ミーティングは2026年1月30日(金)に横浜ランドマークホールにて一般公開形式で開催予定です。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

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